導入事例旭化成株式会社 様

”人, 技術, 他社, 市場を知る”戦略的情報調査にJDreamⅢを活用

掲載日:2020年1月7日

旭化成株式会社

研究・開発本部 知的財産部 技術情報グループ チームリーダー
風間 進二 様

研究・開発本部 知的財産部 技術情報グループ
安部 美佐子 様

研究・開発本部 技術政策室 シニアマネージャー
(兼)人事部 人事室 キャリアサポート担当 シニアアドバイザー
斉藤 修 様

導入効果

  • 完全固定料金制により研究者が費用を気にせずに自由に学術文献へアクセス可能
  • IPアドレス認証とシングルサインオンの導入によって、ID・パスワード入力が不要となり、利用者の利便性が向上
  • 研究者の業績調査により研究者の成長につなげるアドバイスが可能
  • 検索結果におけるスクリーニングの効率化に日本語翻訳が貢献

キーワード

  • シングルサインオン
  • 著者ID
  • 利用状況照会
  • IPアドレス認証

"昨日まで世界になかったものを。"の実現に向け、戦略的情報調査を全社で実行

1922年に旭絹織株式会社が設立されたことに始まる旭化成は、世界の人が求める、世の中にないものを提供するという、”昨日まで世界になかったものを。”をグループスローガンに掲げ、ケミカル・テクノロジーをベースに既存技術が成熟期に達する前に既存技術と新技術を融合した新たなコア技術・事業の立ち上げを繰り返す、事業の多角化によって継続的成長を実現。
現在は「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」領域においてケミカル・繊維・エレクトロニクス・住宅・建材・医薬品・医療・クリティカルケアという8つの主力事業を擁している。

この事業多角化のサイクルを支えるのが様々な分野にまたがる旭化成が保有する技術だ。旭化成は保有する技術に基づく新事業創出や技術の高付加価値化を目指すため、情報の専門家であるサーチャー任せでは無く、サーチャーと研究者や企画担当者などの関係者がチームとなり、特許や学術文献、ニュースなどの情報源を用いた戦略的情報調査および分析を実行している。この取り組みを進化させながら継続していることが旭化成の強みだ。

シームレスなアクセス手段と完全固定料金により、ストレスフリーの利用環境を提供

「目指したのは誰もがストレスなく情報にアクセスできる環境を整えることだった」と語る風間さん

この幅広い領域にわたる多数の研究者・技術者に対して、特許および学術文献に関する情報サービスを提供しているのが知的財産部技術情報グループだ。チームリーダーの風間さんは「私が入社した当時から、旭化成で重要視されていたのが“情報調査の徹底”だ。
旭化成の事業領域が広がっていく中、イノベーションのオープン化への潮流や、さらなる”情報調査の徹底”を強化するため、特許に加え、学術文献データベースも全社で統括することになった。整備する際に、私たちが目指したのは誰もがストレスなく情報にアクセスできる環境を整えることだった」と話す。

技術情報グループでは、環境整備を進めるにあたり、個人でデータベースごとのIDを管理せずにアクセスできること、完全固定料金で利用を気にすることなく使用できるサービスを提供すること、などの条件で検討を進め、特許やJDreamⅢなどを全社に向けて提供を開始したのがIRIS(技術情報検索システム)である。

IRISにJDreamⅢの採用を決めたのは、2018年度から完全固定料金制度が導入されたことも大きな理由だ。風間さんは「以前の課金方法である従量課金では予算の確認作業などもあり、データベース利用を躊躇させ、せっかくのアイデアを眠らせてしまう可能性があった。完全固定料金であれば、研究者が研究のアイデアを思いついたときに、学術文献にシームレスにアクセスが可能で、どれだけ使用しても問題がなければ、アイデアを育てるヒントが見つかるかもしれないと考えた」と話す。

IRIS運用にあたり、導入したのがIPアドレス認証とシングルサインオン(SSO:Single Sign-On)だ。利用者はIRISに利用申請登録を行うと、社内ネットワークログイン後にIRISからJDreamⅢにアクセスするだけで、ID・パスワードを入力することなく、JDreamⅢを利用することができる。
シングルサインオンの導入は利用者だけでなく、管理者にとってもメリットがある。シングルサインオンを導入することで、社内ネットワーク接続時の所属コードが自動的にお名前欄に入力されるため、管理者は正確なログから利用解析を行い、今後のサポート対応を検討することができる。実際、技術情報グループでも必要な時に利用ログを確認し、業務改善にデータを活用しているとのこと。

日本語翻訳された海外論文によって調査とスクリーニングを効率化

「国内外の論文を日本語で検索も抄録確認もできる利点がある」と話す安部さん

IRISは社員からも歓迎された。IRISの文献情報サービスのメニューには科学技術振興機構(JST)が提供する無料の「J-GLOBAL」もあるが、提供する有償サービスのなかで「JDreamⅢ」の利用頻度は高いという。風間さんは「JDreamⅢの導入にあたって、技術情報グループではいかに社員の利用を促すか検討したが、心配は杞憂に終わった」と話す。文献情報データベースの利用件数は飛躍的に伸びたからだ。現在では、IRIS登録者の多くがJDreamⅢを活用しているという。

また、技術情報グループでサーチャーおよび社内教育担当者として活躍する安部さんは、JDreamⅢが活用されている理由を、「国内外の論文を日本語で検索することができる。しかも海外論文の抄録も日本語で読めるという利点がある。膨大な数の論文のなかから重要な情報を探し出す作業を、研究者であれサーチャーであれ、すべて英語で行うのは負担が大きい」と解説する。

サーチャーの視点からもJDreamⅢが使いやすくなったと考えている。安部さんは「サーチャーも以前は“いくら料金がかかるか”を考えながら作業をしなければならなかった。現在は、料金を気にする必要がなくなったので、検索結果を見て“ノイズが多いので、このように絞り込もう”、といった思うとおりの検索をアドバンスドサーチで進めることができるので、より精度の高い情報を研究者に渡せるようになった」と話す。

継続的な研修プログラムで、全社に”情報調査の徹底”の意識を高める

旭化成では“情報調査の徹底”を実践するため、技術情報グループが企画・講師を担当する特許および文献情報データベース利用のための、より実践的な研修が行われている。各年200人程度が受講するが、参加希望者はいつも定員を上回っているという。

こうした研修によって情報調査の基本的内容を理解した社員は、より高精度な調査を行うためにJDreamⅢを利用する。技術情報グループではそのためのサポートを行うとともに、ジー・サーチから講師を派遣してもらい、中級者向けの研修も随時行っている。なお、JDreamⅢでは、2018年から研究領域の動向などを迅速に分析するための新機能として「可視化」などが相次いで追加されており、今後、こうした分野の研修を強化していく予定だという。

そして、旭化成が目指す「事業戦略」「研究開発戦略」「知財戦略」の一体化を実現するために用意されているのが管理者向けの「戦略コース」だ。このコースは、データベースの操作方法を習得する研修ではなく、さまざまなビジネスシーンを想定した研修で、例えば「原料を途上国から輸入し、日本で開発。それを海外で売る場合、知財戦略として何を考えるべきか」という課題を解くための情報活用を教える。まさに、次期リーダー候補を育てるための研修といっていいだろう。

初心者から次期リーダーまでの各種の研修プログラムを毎年実施している。この継続的取り組みが社員の”情報調査の徹底”という認識を高めることに貢献していると言えるだろう。

”人を知り、人を見る"ためのデータ活用

「文献情報、特許情報を定期的チェックすることで、研究者がこれまで何をやってきたかを知ることができる」と話す斉藤さん

研究部門と同等以上に特許および文献情報データベースの利用頻度が高いのが技術政策室だ。旭化成では、データベースを積極的に経営・人材戦略に利用する試みが、10数年前から行われてきたという。
技術政策室シニアアドバイザーで人事部人事室キャリアサポート担当も兼務する斉藤さんは「担当業務の一つは“人を知り、人を見る”ということ。人を知るために、社内および社外研究者の文献、特許情報を定期的にチェックする。これらのデータを活用することで、研究者がこれまで何をやってきたかを知ることができる」と解説する。

具体的には、JDreamⅢであれば、著者名と所属先で検索。研究者の発表論文数の推移が分かるとともに、どんな研究をいつからやっているか、どんな研究にシフトしてきているかなどを把握するという。

研究者を知ることで、例えば、企業の技術戦略に特許は非常に重要だけれど、特許をあまり出願せず、論文をたくさん発表する研究者に対して、その研究者のコア技術に関する情報収集を行い、「コア技術をもっと深めたら」とアドバイスもできるし、「それだけ論文を書いているなら特許も書いたら」と指摘することもできる。斉藤さんは「人を知り、人材を人財に成長させる、という研究者の育成に、これからも関わって行きたい」とのこと。

この人材に関する調査は、今後ますます重要になってくるだろう。成長を遂げている企業には社員として勤務しながら次々とイノベーションを起こす人財「シリアル・イノベーター」が存在する。社内にいる隠れた人材を探しだし、シリアル・イノベーターへと成長させるためのサポートは、企業の成長のために重要なことだ。

研究者をイノベーターとして育成するための情報活用とは?

斉藤さんは、若手を育成するための分析方法を模索している。例えば、最近、知財を生かした経営手法が注目されている。もともとは保有する知財市場での位置づけを、様々な情報をもとに“見える化”する手法の一つで、コア技術をつかった新たなビジネスの創出やM&Aの検討時に用いられる。

この分析手法が“人を知る”ことにも利用できるというのが斉藤さんの考え方だ。この手法を実践すると、実績の多いベテランの研究者・技術者が重要なポジションに位置づけされることもあるが、若く成長を遂げている優秀な人材を見つけ出していきたいという。

斎藤さんは、JDreamⅢによる新しい活用方法を実践するため、「現状のサービスでも使いやすいサービスではあるが、できる限り迅速に情報を収集し、素早く判断を行いたい。そのため、一つのプラットフォームで調査を済ませたいので、幅広い情報をタイムラグなく収集して欲しい。また、検索結果の文献を評価するため、文献に対する評価情報を付与して欲しい。抄録では判断を行えない文献もある。最初の1ページでもよいので、本文を表示できるようにして欲しい」と戦略立案を進める視点から改善要望を挙げられた。

いま企業では大学や公的研究機関などとの共同研究を通じて、社外の知財を生かすオープンイノベーションの活性化が叫ばれている。こうしたなか、旭化成では若手の育成はもちろんのこと、社内外に通用する専門性を評価し、広くグループ全体で活躍することを期待し「高度専門職制度」を実施している。斉藤さんは「深い技術を究め、それを横に展開するつながりを持つ。それが技術者の到達点だというメッセージが込められている」と解説する。

旭化成にとって、科学技術情報データベースは、広く世界の科学技術情報を調査するだけのツールではなくなった。社内に育っている新たなコア技術を発見し、それを有望なオープンイノベーションにつなげたり、研究者のキャリアアップをサポートする戦略的ツールとして、より活用されることになるだろう。

取材・執筆:科学ライター 荒川 直樹(アースワークス)

ご活用いただいているサービス・機能

IPアドレス認証

お客様のIPアドレスを認証項目とするため、ID/パスワード不要でログイン可能となる認証方法のこと。JDreamⅢはID/パスワード、IPアドレスという2種類の認証方法を提供。併用も可能。

  • JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。

シングルサインオン

一度のユーザ認証処理で、異なるサービスもシームレスに認証させる方法のこと。JDreamⅢではサービス認証に加え、一度目の認証情報に基づく値をお名前欄に自動反映させることも可能。

  • シングルサインオン認証に関する詳細はお問い合わせください。

著者ID

著者ごとに科学技術振興機構(JST)が付与する固有のIDで、検索に使用することが可能。

  • JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。
  • 同サービスとして機関に付与する機関IDがあります。

ユーザー利用状況参照

管理者メニューからユーザ利用状況参照を選択すると、 利用状況確認画面が表示され、過去3年度分が参照可能。

  • JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。
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