JDreamの部屋文献情報の活用方法

製品開発の方針を決めるために、他社の技術動向・企業動向を把握する

掲載日:2021年8月20日

新製品開発や研究開発の方針を策定する際に、他社の技術動向をどのように把握するか、悩んだことはありませんか。
ニュース記事の調査では詳細を知ることができず、特許調査では出願から公開までのタイムラグが大きすぎて、最新の情報を得にくいのが現状です。本ページでは、そんな調査の悩みを解決する方法をご紹介します。

学会発表や論文から、燃料電池自動車の技術動向を確かめる

JDreamⅢに収録されている学会発表や論文を企業単位で調査すると、企業が取り組む研究内容が見えてきます。学会発表や論文の情報はジャーナルに掲載されてから短期間でJDreamⅢに収録されるため、これらを調査対象とすることで、技術動向をタイムリーに確かめることができます。

自動車業界では、2050年の脱炭素社会実現に向け35年までにガソリン車の新車販売をやめるという計画があります。
今回は、脱炭素の一翼を担うと期待される動力源「水素」を使う燃料電池自動車を例に、各社の技術動向を把握する目的でJDreamⅢを使って調べてみます。

Step 1 燃料電池自動車の同義語を準備して文献検索を行う

調査の目的に合うキーワード・文字列、対象ファイルを精査し、検索します。できるだけ具体的な情報を漏れなく得るために、「燃料電池自動車」と同義の文字列をリストアップします。
今回は以下の内容で検索を行いました。

使用した検索条件
検索対象ファイル JSTPlus
検索式 "燃料電池自動車"/AL OR "燃料電池搭載車両"/AL OR "燃料電池車"/AL OR "燃料電池車両"/AL OR "燃料電池電気自動車"/AL OR "fuel cell vehicle"/ALE OR "fuel-cell vehicle"/ALE

Step 2 燃料電池自動車の文献数が多い企業を確認する

情報ボリュームや関係機関を把握するため、検索結果を機関IDで分けて分析しました。
自動車メーカーとしては、この分野ではトヨタ自動車、本田技研、日産自動車が上位にきていました。

機関ID

Step 3 トヨタ自動車と本田技研の特性を、準シソーラス用語で比較分析する

次に、文献数が多かったトヨタ自動車と本田技研について比較分析を行います。
燃料電池自動車の検索結果からJDreamⅢのグラフ化機能にある「2者比較グラフ」を使用すると、選択した分析対象による視点で、2社を簡単に比較することができます。

今回は、グラフ表示する二社の比較対象を準シソーラス用語にし、特性を分析しました。
準シソーラス用語には新しい技術用語や著者キーワードが含まれるため、機関IDと掛け合わせることで特性を比較しやすくなります。

機関ID×準シソーラス用語

左右に伸びる横棒の長短で差があれば、その項目はどちらか一方の論文に特徴的ということになります。

例えば「高圧水素」はトヨタ自動車の論文に多く、本田技研では少ないのが見て取れます。
逆に、「水素製造」は本田技研の論文に多く、トヨタ自動車では少ないことがわかります。

Step 4 国際特許分類から技術内容の傾向を把握する

論文で記述されている技術内容の傾向を把握するには、国際特許分類(IPC)での比較が便利です。

JDreamⅢの文献データには、関連する国際特許分類(IPC)のデータが付与されているので、その視点からも分析できます。

二社とも「燃料電池」のIPCが多くありましたが、それ以外のものでは以下のような特徴が見えました。
機関ID×IPC(メイングループ)

トヨタ自動車は、水素そのものの研究やガスの圧縮固化など、水素ガスの取り扱いに関する研究が特徴的です。
水素と酸素の化学反応で生じる電気でモーターを回す「燃料電池自動車」よりもさらに多様な側面が見られ、水素を直接燃やして動力源にする「水素エンジン車」で24時間耐久レースを完走したニュースもあり、燃料電池自動車以外の水素の研究も盛んなようです。

本田技研は電動機やコンデンサなどの研究に特徴が見られます。
2021年8月で燃料電池車の生産を中止し当面電気自動車(EV)に注力するという発表がされたため、そのあたりと関係しているものと思われます。

このように、情報ボリューム・用語特性・国際特許分類の視点で分析することで、二社の異なる戦略が読み取れました。
現在の課題や気になる方面の技術動向把握に、JDreamⅢをぜひご活用ください。

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