導入事例株式会社カネカ 様
研究者の“ひらめき”を引き出すツールとしてJDreamⅢを活用
掲載日:2019年5月20日
- 株式会社カネカ
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知的財産部 企画管理グループ 幹部職
持井 聡子 様 - 株式会社カネカテクノリサーチ
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技術情報サービス部 主任
矢野 美穂 様
導入効果
- 研究者自身が検索を行うことで研究のアイデアやヒントを把握
- 「ユーザSDI」により重要な文献情報やアイデアを共有
- 可視化機能の活用で効率よく検索結果の状況を把握し、結果を絞り込み
- JDreamⅢの検索結果から国内外の研究者とのコミュニケーションを促進
キーワード
- ユーザSDI
- 可視化機能
- 海外文献
- ネットワーク利用
社会課題の解決に向けた価値のあるソリューションをグローバルに提供
株式会社カネカは「Material」、「Quality of Life」、「Health Care」、「Nutrition」の4つの事業ドメインに関する社会課題の解決に向けた価値あるソリューションをグローバルに提供するため、「研究開発」を成長ドメインとして捉え、イノベーションや新たな技術開発を強化している。
その成果事例として近年、マイクロプラスチックによる海洋生態系への影響に関する懸念が高まっているなか、世界が注目するのがカネカが開発したポリエステル系生分解性ポリマー(商品名:カネカ生分解性ポリマーPHBH)だ。2017年には国際的な認証機関により「海水中で生分解する」という認証(OK Biodegradable MARINE)を取得、食品トレー、カップ、ストローなどへの採用拡大が期待できる。
研究開発を推進する上で必要となる知的財産戦略をカネカグループの関連部門と連携しながら進めているのが知的財産部で、カネカテクノリサーチは業務のひとつとしてその知的財産業務を高度な分析技術、調査技術でサポートしており、一体化してカネカグループの知財戦略の推進を狙っている。
社会動向を見据えた戦略的研究の加速に欠かせない学術情報
こうした時代の潮流を見据えた研究開発を加速するために、カネカが取り組んできた取り組みの一つが科学技術データベースによる文献情報利用の促進だ。社会動向や技術動向を把握するためには特許情報のみでは不十分で、特許に反映されない段階での研究動向を把握したり、新たな研究テーマを探索するために欠かせない文献調査の重要性が高まっている。
カネカの持井さんは「科学技術を含め、世の中の動向を知ることは研究者の使命の一つ。しかし、日常の業務の忙しさもあって十分にはできていないのが実状だ。科学技術データベースを有効利用することで、研究効率を高めて欲しい」と話している。
多忙な研究者の情報収集を効率化するJDreamⅢの付加価値機能
カネカでは、科学技術データベースの利用管理の窓口を知的財産部が行っている。そして、グループ企業のカネカテクノリサーチはカネカ全社からの調査依頼に対応するほか、知的財産部と連携してe-Learning教材を作成し、知的財産に関わる社内教育を行い研究者の調査力強化にあたっている。
知的財産部が契約している商用の科学技術データベースは3つあるが、そのなかで最も広く使われているのがJDreamⅢだ。カネカテクノリサーチの矢野さんは「JDreamⅢの付加価値である、科学技術全分野の国内外学術文献の収録、検索に適した用語(シソーラス)の利用による高精度な検索、海外文献の日本語検索および内容確認などによって、文献調査の効率を高めてくれる。さらにJDreamⅢには国内学会の予稿集など、海外のデータベースでは得られない価値の高い情報も多く含まれている」と話す。
ここ数年、JDreamⅢは次々と新機能を導入しているが、矢野さんは「なかでも研究者の注目度が高いのは可視化だ。年1回、文献調査に関する情報を研究者に伝える機会があるが、昨年末に可視化機能について紹介したところ、多くの研究者がJDreamⅢを利用し、契約中の同時ログイン数を超過してアクセスできない時間帯もあった」と話す。
可視化は得られた文献情報の集合を、発行年度、国、シソーラス、著者ID、所属機関などによってグラフ化する機能だ。矢野さんは「かつては得られた文献情報をExcelで表示していたため、全ての結果に目を通さないと全体像が見えなかった。しかし、検索結果を可視化することで技術動向を読み取りやすくなった」と解説。これまで検索結果の把握にかかっていた時間を8割ほど減らすことができ、大幅な効率アップにつながっているという。
グローバルな研究活動を把握、国際共同研究への貢献
JDreamⅢの付加価値サービスの一つとして、例えば、東京大学の機関IDを入力すると、”東大”や”東京大学”といった表記ゆれを考慮せず、東大の論文をまとめて検索することができる機関コード(ID)や研究者を特定する著者コード(ID)が提供されている。国内文献と合わせて海外文献にもコード(ID)が付与されていることが調査の効率アップに貢献しており、どの企業と学術機関の研究者が共同研究に関わっているかを検索モレやノイズの少ない結果から確認できるという。
持井さんは「社内のある研究者はJDreamⅢを使って探し求めていた研究成果が掲載されている海外論文を発見。アメリカにいる著者と連絡をとることで共同研究がスタートした。研究者はいまアメリカで自分の夢をかなえようと頑張っている」と事例を紹介する。
研究者の新しいアイデアを生み出す可視化機能
JDreamⅢによる文献調査を行うのは、基本的に研究者本人だ。カネカでは、新入社員に基本的な操作研修を行うほか、年1回、検索技術に関する情報を提供する場を設けているという。このほかe-Learningなどの各種教材や、部門用にカスタマイズした出張研修を行うことで、研究者一人ひとりの検索スキルを高めてきた。
もちろん矢野さんのような専門家(サーチャー)にアドバイスを求めることもある。その場合でも、専門家は担当者の話を丁寧にヒアリングした上で技術的な提案は行うものの、検索作業はサーチャーと研究者が共同で行うよう薦めているという。その理由について矢野さんは「実は研究者自身、検索目的や目標が見えていないことも多い。サーチャーに丸投げしても満足のいく文献情報が得られないことも多い。研究者からの問い合わせで一番多いのは、一応集合はできたけれどどう絞りこんでいいか分からないというものだが、例えば、可視化によって検索結果を俯瞰することができるようになり、研究者自身がその結果を見ながら絞り込んでいくことで、『今度はこんなキーワードを追加してみたい』といったアイデアも浮かぶ。それを繰り返すことで、どんどん自分がやりたいことが見えてくる」と解説する。
そして、そのなかから研究者自身も想定していなかった結果にたどり着くことも多いという。持井さんは「文献検索は、研究者の創造性を誘発するツールといってもいい。研究者にしかできないことを実現してもらうため、研究者が自由に検索できる環境を提供していくことは私たちの役割のひとつです」と話す。
コミュニケーションを向上させるユーザSDI登録を促進するマニュアル整備
カネカでは、検索機能の活用だけでなく、あらかじめ登録した検索式を定期的に自動検索し、その回答結果を新着情報として配信するユーザSDIも有効活用している。ユーザSDIの配信結果を部署ごとで共有する仕組みを積極的に展開するため、知的財産部では検索手順を標準(マニュアル)化し、社内に公開している。各部署では、マニュアルに沿って重要なテーマを得るための検索式をユーザSDI(新着情報)配信サービスに登録。配信された新着情報を研究者が分担して読み込むことで、その重要性を評価。必要な文献を部署内のデータベースに蓄積するというものだ。この取り組みよって、研究者が得た研究のヒントなどを部署内で共有することにもつながるという。
なお、この仕組みは昨年JDreamⅢの回答結果を共有するための複製配布・ネットワーク利用規程が緩和されたことによって実現したという。持井さんは「他のデータベースを含め、これまではネットワーク上に情報を置くには別途費用が発生するため実現できなかった。JDreamⅢの利用規程緩和によって実現し、研究者同士の情報共有が高まった。研究効率のアップに期待したい」と話している。
検索サポートを強化したクイックサーチで若手研究者の利用を促進
2019年2月下旬から開始されたクイックサーチの大幅な改良や国際特許分類(IPC)の付与に対する期待も大きいようだ。持井さんは「若い研究者などでは、無料の検索エンジンである Google Scholar などシンプルなインターフェースを持つ検索エンジンに慣れており、なかなかJDreamⅢを使ってもらえないケースもあったが、今回の改良により、そうしたユーザーも豊富な機能を持つJDreamⅢに使い慣れて欲しい」と期待する。
IPC付与への期待について持井さんは「キーワードで見つからない文献情報が、IPCで集められることもあるし解析もできる。楽しみにしている」と話す。カネカでは、研修の初期にIPC分類についても紹介しており、研究者は自分たちの研究テーマがIPCのどこに分類されているかは意識しているという。IPC付与は、すぐに文献の絞り込みなどに活用されるようになるだろう。
思いついたアイデアを途切れさせないサービスの提供に期待
カネカの研究開発を力強くサポートしているJDreamⅢ。広く利用されているだけに要望も大きい。知的財産部が行ったアンケート調査によると、研究者からの要望で最も多いのは、情報検索から目的の論文の入手までをできるだけシームレスに行いたいというものだったという。研究者は、情報検索の過程でひらめいたアイデアをより具体的な形にするために、すぐ論文を確認したくなる。調査結果から原文複写を行う件数は大幅に増えたが、論文入手の手順が複雑であったり、時間がかかりすぎたりすると、せっかくのアイデアもしぼんでしまう。これはJDreamⅢの機能改良だけで解決する課題ではないが、カネカではより良いシステムをジー・サーチの協力も得ながら構築していきたいという。
持井さんは「海外論文の収録もさらに充実させて欲しい。そうなれば必要とされる情報検索の作業をJDreamⅢのみで行うことも可能になる。それは研究者の思考を途切れさせないシステム。名前のとおり夢の検索エンジンに進化して欲しい」と期待をよせている。
- 「カネカ生分解性ポリマー」及び「PHBH」は株式会社カネカの登録商標です。
ご活用いただいているサービス・機能
ユーザSDI
検索条件をあらかじめ登録しておくことにより、データベースが更新されるごとに条件にあった回答結果をメール配信するサービス。ユーザSDIはJSTPlus、JMEDPlus、JAPICDOCファイルで利用可能。
- ユーザSDIのご利用にはJDreamⅢ検索サービス”企業向け固定料金_ユーザSDIプラン”のお申込みが必要です。
可視化機能
検索結果を可視化(グラフ化)すること。検索結果全体の俯瞰や、経年による変化から、気になるポイントに絞り込むことが可能。
- JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。
海外文献
海外で出版された文献資料。タイトルと抄録の日本語翻訳したデータを提供。2016年よりElsevier、Wiley、RSC、IEEEなどの著名海外誌の収録を大幅拡充。オリジナル英文抄録も追加。
- JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。
複製再配布・ネットワーク利用
文献情報を機関内で共有すること。文献情報を複製/印刷する「複製再配布」とサーバーなどで文献情報を共有する「ネットワーク利用サービス」を提供。複製再配布30部、ネットワーク利用50人を超過する利用には別料金が発生。
- JDreamⅢ検索サービス(全てのプラン)の契約でご利用いただけます。