導入事例住友電工知財テクノセンター株式会社 様
住友電気工業株式会社 様
サーチャーによる付加価値検索と新着情報の共有利用で、研究者の発想力を向上
掲載日:2019年5月20日
- 住友電工知財テクノセンター株式会社
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活動推進センター 情報分析グループ グループ長
小谷 光弘 様活動推進センター 情報分析グループ 技師
高橋 玲子 様活動推進センター 情報分析グループ
金澤 実緒 様 - 住友電気工業株式会社
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光通信研究所 光伝送媒体研究部 主席
相馬 一之 様
導入効果
- シソーラス検索などの高精度な検索機能の活用により、研究者の多様な調査ニーズに対応
- 研究者が必要とする最新の文献情報を配信するユーザSDIと、配信文献を共有するフォーカスサービスとの組み合せにより、研究開発の効率アップに貢献
- 特許情報と合わせて積極的に文献情報を研究戦略策定の情報源に活用
キーワード
- ユーザSDI
- フォーカスサービス
5分野を中心に幅広い事業をグローバルに展開
住友電気工業を中核とする住友電工グループは、「自動車」「情報通信」「エレクトロニクス」「環境エネルギー」「産業素材」という5つの分野で幅広く事業を展開している。グループの知的財産については住友電気工業が統括しているが、知財部門の機能分社という形で住友電工知財テクノセンターは設立された。知財部門スタッフの多くが住友電気工業と住友電工知財テクノセンターを兼務しており、一体化してグループの知財を扱っている。
住友電工知財テクノセンターにおいて、特許、学術文献などの調査を担当するのが活動推進センターの情報分析グループだ。そのうち住友電気工業における光ファイバ・ケーブル、光関連機器の研究開発拠点でもある横浜製作所を中心に業務を行っているのが情報分析グループだ。
特許調査と学術文献調査の連携
グループ長の小谷さんは「研究者、技術者は、情報を入手したいとき、各自が無料の検索エンジンである Google Scholar などを利用することもあるが、より高精度な調査の必要があるときには、情報分析グループの専門家(サーチャー)に依頼する」と話す。調査に専門家がかかわることで、開発テーマによる調査のバラツキを減らすなど、より戦略的な情報活用が可能になるからだ。
また、情報分析グループには特許調査の専門家と学術文献調査の専門家がおり、両者が連携することで、一つの技術について特許からも学術文献からも裏付けがとれるという強みもある。特許調査を担当する高橋さんは「先行技術調査や無効資料調査に関する特許調査を行っているが、特許は出願してから公開されるまでにタイムラグがある。そのためタイムラグをカバーするため、特許調査を依頼された場合でも、学術文献調査を行うことを提案することも多い。例えば、気になる研究成果を発表している著者をマークして発表論文を追跡することで、近い将来の特許出願を推測することも可能だ」と解説する。
7,000万件超の文献情報を活用し、多様な調査要望に応える
研究者、技術者からの様々な調査依頼に対応されている情報分析グループにおいて学術文献調査のためのメインツールとして利用するのが科学技術文献情報データベース「JDreamⅢ」だ。学術文献調査を担当する金澤さんは「JDreamⅢは科学技術全分野の国内外の学術文献が多数収録されており、それらの収録文献は思いついた言葉での検索だけでなく、検索に適した用語(シソーラス用語)検索などの高精度な検索方法を利用することで、効率よく必要な文献を検索することができるため、研究者からの多様な調査要望に応えることが可能だ。また海外文献を日本語で検索できるのもJDreamⅢを利用する理由の一つ」と話す。
では研究者の多様な調査要望に応えるということはなにか。金澤さんは「調査は、時間をかけて研究者の要望をヒアリングすることから始まる。研究者自身が調査の着地点を十分にイメージできていないことも多い。基礎研究、製造方法、素材など、調査にはさまざまな観点があるので、それを明らかにして調査を行い。その結果を踏まえてさらにヒアリングするという作業を繰り返していく」と解説する。
現在では、こうした専門家のサポートに対して、研究者、技術者の期待も大きくなってきた。光伝送媒体研究部の相馬さんは「光ファイバ・ケーブルは、光通信に関する基礎理論だけでなく、ガラスの塊を引き伸ばす技術、コーティング技術など、多様な技術の塊といえる。研究開発において課題が生じたとき、幅広い視点から調査のアドバイスなどをもらえるのがありがたい。当事者が調査を行うと視野が狭くなりがちで、必要な情報を見落とすこともある」と話す。
これに対して金澤さんは「ヒアリングした内容から検索式を考えるが、良いアウトプットが出たときは嬉しい。提案した文献リストのなかから『ぜひ本文を読みたい』という要望があったときは、モチベーションが高まる」と話す。
ユーザSDI機能で自動配信される最新の文献情報を迅速に社内共有
また、研究者・技術者の情報収集をサポートするために活用しているのが、JDreamⅢのユーザSDI(新着情報)配信サービスとフォーカスサービスを組み合わせたサービスだ。ユーザSDIはJDreamⅢに検索式を登録すると、検索式を定期的に自動検索し、その回答結果を新着情報として配信するサービスで、フォーカスサービスはユーザSDI(新着情報)の配信結果を社内で共有、活用、蓄積することを目的とする専用サイトである。なお、2018年4月よりJDreamⅢの回答結果を共有するための複製再配布・ネットワーク利用規定が緩和され、回答結果の50人までの共有であれば、追加費用は不要という、フォーカスサービスを利用した情報共有をより行いやすい環境が整備されている。
高橋さんは「最新情報を社内で共有するために、かつては学会誌、業界紙の目次を紙にプリントし配布していたが、その代替としてフォーカスサービスを使い始めた。フォーカスサービスは、利用者であればSDIの配信結果をいつでも好きな時間に閲覧できる。プリントアウトや回覧作業をなくすことができたことに加え、更新通知が同じ時刻にメール配信されるので情報収取に関するタイムラグがなく、過去の蓄積された情報も検索可能であるというメリットも大きかった」と話す。
研究者にとって『学術情報はイノベーション創出や課題解決を考えるための必須情報源』
さらに、2年前からは目次情報だけでなく、テーマ別配信にも力を入れている。研究者、技術者ごとに関心のあるテーマのSDIを提供するものだが、フォーカスサービスの利用者である相馬さんは「具体的には研究開発の効率アップにつながりました。かつては注目している研究機関の動向などを Google Scholar を使って定期的に調査していたが、条件設定など検索精度があまり高くなく毎回同じ論文がダブって出力されたりすることも多かった。現在はフォーカスサービスを利用したテーマ配信の情報を確認しているが、配信情報は有効で必要な情報が充足しているため、Google Scholarなどを検索する機会もほとんどなくなったとのこと。
そして、フォーカスサービスのための検索式の登録でも、情報分析グループによる十分なヒアリングに基づく検索式作成が貢献してくれているという。相馬さんは「情報検索にどのような網をかけるかが重要。研究者が把握している研究分野のコアな情報だけだと、研究開発の課題が生じたとき、解決に必要な『弾』が足りない。そして、それは周辺領域にころがっていることが多い。普段から幅広く文献情報に触れ、重要な『弾』を準備しておきたい」と語る。
実際、相馬さんの同僚が研究開発の壁にぶつかったとき、フォーカスに配信されていた文献を提供することで、即時に課題解決につながることもあったという。
フォーカスサービスにより研究所全体の情報活用力向上を目指す
小谷さんは「こうした戦略的な文献調査によって、これまで考えてこなかったような研究の方向性を見つけたという事例も増えてきたと感じている。産業技術は知の集合体なので、専門家による幅広くかつ高精度な情報提供は、その肉付けになると思う。ただ課題は、まだ文献利用に個人差があることだ」と語る。
例えば、若い研究者、技術者は日常の業務に忙しく、文献情報に触れる機会が少なくなりがちな現状がある。これについて高橋さんは「JDreamⅢのSDI機能とフォーカスサービスをより有効に使ってもらうことで、研究者、技術者の文献情報利用を高めるための取り組みを行っている」と話す。例えば、情報が配信されるとメールで通知されるが、これまでは配信件数が何件あるかという情報のみで、どのような文献が配信されたのかは分からなかった。これからは配信内容の概要を案内することで、より積極的に文献情報にアクセスする時間を増やすようにしていく計画だ。また、研究者、技術者に必要な情報を配信するためには、良いヒアリングが欠かせない。できるだけ多くの技術者に会い、ヒアリングの能力を高めることも欠かせないという。
技術動向の予測のため、新サービスのIPC(国際特許分類)付与に期待
住友電工グループの研究開発において重要な役割を果たしているJDreamⅢ。住友電工知財テクノセンターの情報分析グループでは、JDreamⅢの機能アップにも期待している。
金澤さんは「昨年、可視化機能が追加されユーザーセミナーにも参加した。サービス開始当初以降も、ユーザの要望に応じた改良が行われているというので、今後ぜひ使いこなすようにしていきたい。また、私たちは情報検索の専門家なので主にアドバンスドサーチを使用しているが、クイックサーチの改良版についてどんな使い方ができるのか検討したい」と話す。
情報分析グループでは、特許調査と学術文献を合わせた情報調査を行うことで、今後の技術動向を予測するような方向を目指している。高橋さんは「そこで、新サービスの国際特許分類(IPC)の付与に期待したい」と話す。もちろんJDreamⅢおよびフォーカスサービスへの注文もある。JDreamⅢでは国内文献の網羅性の継続、海外文献収録のさらなる充実というコンテンツ拡張を進めてもらいたいこと、また多くの研究者がアクセスするフォーカスサービスは、より利用しやすくなるよう、機能のカスタマイズ、操作性の向上やアウトプットデータのデザイン改良などインターフェースの改善に関する要望をお伝えいただいた。
小谷さんは「住友電工グループのすべての研究者に文献情報に接してもらって、研究開発のレベルアップにつなげるのが私達の目標だ。サービス内容を知ってもらうと同時に、研究内容に合ったものを提供していきたい」と話している。その目標に近づくためにJDreamⅢとフォーカスサービスの高機能化は重要な役割を果たしそうだ。
ご活用いただいているサービス・機能
ユーザSDI
検索条件をあらかじめ登録しておくことにより、データベースが更新されるごとに条件にあった回答結果をメール配信するサービス。ユーザSDIはJSTPlus、JMEDPlus、JAPICDOCファイルで利用可能。
- ユーザSDIのご利用にはJDreamⅢ検索サービス”企業向け固定料金_ユーザSDIプラン”のお申込みが必要です。
フォーカスサービス
ユーザSDIにて配信された文献情報を社内で共有、活用することを目的とするお客様専用のポータルサイト。いち早く配信された文献を研究者同士で共有することが可能。
- フォーカスサービスのご利用には別途契約が必要です。詳細はお問い合わせください。