調査分析レポート

掲載日:2023年10月2日

デジタルツインに関する論文・特許調査分析事例02特許数と論文数の比較から見た適用分野別の状況

適用分野の動向

JDreamⅢデータベースには特許の技術分類コードである「IPC(国際特許分類)」が付与されていますので、IPCを使った論文の検索や分析が可能です。
ここではIPCを分析軸として、特許と論文におけるデジタルツインの適用分野の分析結果をご紹介します。
図6‐1から図6‐4は、IPCクラス別の特許出願数・論文発表数比率を示すグラフです。
特許と論文で分析対象母集団の件数に違いがあることから、このグラフでは単純な件数ではなく、全体に対する比率をプロットしています。


まずは、「Aセクション(生活必需品)」を見てみましょう。
最も多いのが「A61:医学」(例:臓器や疾患モデルのシミュレーションを行い疾病や重症度の予測や評価を行う)で、これは論文の方の比率が高い結果でした。
それに「A63:スポーツ・ゲーム」が続きますが、こちらは特許の方が多い結果でした。
3番手には「A01:農林水産」(例:温度・湿度などの生育環境をコントロールする植物工場)が位置していました。

「Bセクション(処理操作;運輸)」は全体的に論文より特許の方が多い傾向です。
特許では「B25:ロボット」、「B60:自動車」、「B66:エレベーター・クレーン」(例:デジタルツイン上でエレベータ設計を行うことで現場での作業時間を大幅に短縮)、「B23:工作機械」(例:切削や溶接などの工程シミュレーションや機械のリアルタイム監視)、「B65:物流・ロジスティクス」(例:自動倉庫によるスマート物流)などが目立っています。

図6-1【IPC別 特許出願数・論文数比率(A・Bセクション)】

「Cセクション(化学、冶金)」及び「Dセクション(繊維、紙)」は特許及び論文共に全体的に比率が低い結果となっていました。
化学産業へのデジタルツインの応用は本格化していない可能性があり、詳細な調査が必要かもしれません。

図6-2 【IPC別 特許出願数・論文数比率(C・Dセクション)】

「Eセクション(固定構造物)」では、「E21:採鉱・石油・ガス」(例:掘削環境をデジタルツイン上で再現することで、安全性や作業効率を向上させる)の特許の突出が目立っています。
その他「E01:道路・橋梁建設」、「E04:建築物」においては特徴的な点は見られませんでした。

「Fセクション(機械工学;照明;加熱;武器;爆破)」では、「F16:機械要素(ボルト・ナット、軸受、クラッチ、継ぎ手、ブレーキ、弁)」(例:機械部品の設計や製品寿命管理)の特許が突出しています。
「F24:エアコン」、「F03:風力発電」は特許と論文でほぼ同じ比率となっています。
「F02:エンジン」は特許よりも論文の方が比率が高くなっています。 これは自動車のみならず、航空や船舶などのエンジン開発(省エネルギーエンジン開発、設計コストの低減化、寿命診断など)に関連する論文が多いことに起因しているものと思われます。

図6-3【IPC別 特許出願数・論文数比率(E・Fセクション)】

「Gセクション(物理学)」では、デジタルツインの主要IPCと考えられる「G06:計算・プロセッシング」は特許と論文で大きな差はありません。
また、デジタルツインの要素技術である「G05:制御系」と「G01:センシング・テスト(センサー)」においては、「G05:制御系」では特許と論文で大きな差は見られないものの、「G01:センシング・テスト(センサー)」は特許の方が論文の2倍以上の比率となっており、基礎研究の段階から技術適用の段階にシフトしているものと考えられます。
「G16:特定用途分野に適合した情報通信技術(バイオインフォマティクス・ヘルスケアインフォマティクス)」(例:医療診断支援システムや健康管理プラットフォームなど)では論文はほとんど無いのに対し、特許が多い点が特徴的です。

「Hセクション(電気)」では特許及び論文でほぼ同じような傾向を示しています。
デジタルツインの重要な要素技術の一つである「H04:通信技術」はやや特許が多い傾向にあり、デジタルツインの主要な用途である「H02:発電・配電」では特許と論文はほぼ同じ比率となっています。

図6-4【IPC別 特許出願数・論文数比率(G・Hセクション)】
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