調査分析レポート
デジタルツインに関する論文・特許調査分析事例04索引語分析による課題、用途、要素技術の動向著者:熊野 康孝 株式会社ジー・サーチ
論文キーワードからみる「課題・用途・要素技術」の動向
JDreamⅢデータベースには論文の研究主題を表す以下のキーワードが収録されており、そのキーワードを分析することで研究動向を分析することが可能です。
- シソーラス用語:論文の研究主題を表す「統制キーワード(データベース作成機関側が付与した統制語)」
- 準シソーラス用語:論文の研究主題を表す「非統制キーワード(統制されていない自由語)」
ここではデジタルツインにおける課題・用途・要素技術について分析した結果をご紹介します。
課題の動向
図11は、上位『課題キーワード』(シソーラス用語・準シソーラス用語)別の経年推移を示したグラフで、表3は『課題キーワード』の中で直近3年比率が上位のキーワード(=直近3年で急上昇しているキーワード)を示した表です。
これらのグラフ及び表に登場した『課題キーワード』をカテゴリ別に以下に整理しました。
| カテゴリ | 課題キーワード |
|---|---|
| セキュリティ |
|
| 予測精度 |
|
| システム性能 |
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| 自動化 |
|
| プライバシー保護 |
|
| 相互運用性 |
|
| リアルタイム性 |
|
『セキュリティ』に関する課題キーワード(サイバーセキュリティ、システムセキュリティなど)が最も多く出現しており、デジタルツインにおいて重要な課題であることがわかります。
次に、『予測精度』に関する課題キーワードも目立っています。これらのキーワードの多くは直近3年比率で頻出していたことから、予測精度に関する研究が急速に進んでいるものと推測されます。
また、準シソーラス用語で1位であった「リアルタイム」は『リアルタイム性に優れたシミュレーション』や『現実世界のリアルタイムなデータ収集』などを指しており、『リアルタイム性』もデジタルツインにおいて重要な課題であると考えられます。
| 【課題】合算シソーラス用語 | 直近3年比率 |
|---|---|
| 精度 | 89% |
| サイバー攻撃 | 79% |
| 高忠実度 | 78% |
| 計算負荷 | 74% |
| 予測精度 | 73% |
| 生産効率 | 72% |
| 侵入検出 | 71% |
| 製品品質 | 68% |
用途の動向
図12は、上位『用途キーワード』(シソーラス用語・準シソーラス用語)別の経年推移を示したグラフで、表4は『用途キーワード』の中で直近3年比率が上位のキーワードを示した表です。
これらのグラフ及び表に登場した用途キーワードをカテゴリ別に以下に整理しました。
| カテゴリ | 用途キーワード |
|---|---|
| 製造 |
|
| 故障予知・ライフサイクル管理 |
|
| 電力・エネルギー |
|
| 建設 |
|
| スマートシティ |
|
| サプライチェーン |
|
| 自動車 |
|
| 航空宇宙 |
|
| 意思決定支援システム |
|
『製造』に関するものが最も多く、次いで『故障予知・ライフサイクル管理』に関するものが多いようです。
特定の業界を示すものとしては、『電力』、『建設』、『スマートシティ』、『サプライチェーン』、『自動車』、『航空宇宙』に関するキーワードが登場しています。
また、『意思決定支援システム』に関するキーワードも上位に登場しており、デジタルツインによる『意思決定支援システム』が大きな注目を集めています。
デジタルツインが以下の順に進んでいくことを考えますと、特許ではセンシングによるデータ収集の発明が多く出願され、論文ではその先にある「意思決定支援システム」が論じられていることは興味深い結果です。
- データの収集やデジタル化
- データの統合や整理
- 可視化
- 分析やシミュレーション、シナリオの作成
- 意思決定支援、シナリオの統合
| 【用途】合算シソーラス用語 | 直近3年比率 |
|---|---|
| 建築物 | 88% |
| 切削 | 83% |
| 意思決定支援 | 75% |
| 組立工程 | 74% |
| 予測保全 | 74% |
| 故障診断 | 73% |
| 持続可能な開発 | 72% |
| エネルギー | 72% |
| 船体構造 | 72% |
| 電池 | 72% |
| 建設業 | 72% |
| 最適化手法 | 71% |
| 製品設計 | 71% |
| 発電所 | 71% |
| 構造ヘルスモニタリング | 71% |
| 保守管理 | 70% |
| 風車 | 70% |
| BIM【建築】 | 69% |
要素技術の動向
図13は、上位『要素技術キーワード』(シソーラス用語・準シソーラス用語)別の経年推移を示したグラフで、表5は『要素技術キーワード』の中で直近3年比率が上位のキーワードを示した表です。
これらのグラフ及び表に登場した要素技術キーワードをカテゴリ別に以下に整理しました。
| カテゴリ | 要素技術キーワード |
|---|---|
| 人工知能(AI) |
|
| データ収集 |
|
| シミュレーション・モデリング |
|
| ネットワーク・通信 |
|
| ソフトウェア |
|
| コンピューティング |
|
| 最適化手法 |
|
| 制御 |
|
『人工知能(AI)』に関するキーワードの出現が多く、デジタルツインにおいて重要な要素技術であることがわかります。
次いで、『データ収集』に関するキーワード「センサ」、「センサーネットワーク」も目立ちます。デジタルツインでは現実世界のデータ収集も重要な要素技術であることがわかります。
『ネットワーク・通信』カテゴリに登場している「ブロックチェーン」も注目されます。「ブロックチェーン」によるデータ改ざん防止技術は、デジタルツインの重要な課題である「サーバーセキュリティ」に有効な技術と考えられます。
『最適化手法』に関するキーワードとして「多目的最適化」、「粒子群最適化」 がありますが、これは『用途の動向』でも述べましたが、『複数シナリオの統合 ⇒ 意思決定支援』に大きく関連する技術と考えられます。
これらはトータルでの件数は多くなかったものの、直近3年比率のランキングで上位に登場していたことから、今後も大きく増加していくことが予想されます。
| 【要素技術】合算シソーラス用語 | 直近3年比率 |
|---|---|
| フレームワーク【ソフトウェア開発】 | 85% |
| プロセスパラメータ | 83% |
| 三次元モデル | 79% |
| 多目的最適化 | 78% |
| 監視 | 78% |
| Q学習 | 78% |
| 畳込みニューラルネットワーク | 77% |
| ディープラーニング | 77% |
| 計算流体力学 | 75% |
| 学習モデル | 75% |
| コンピュータビジョン | 75% |
| ニューラルネットワーク | 75% |
| ランダムフォレスト | 73% |
| 資産管理シェル | 73% |
| 機械学習 | 73% |
| 粒子群最適化 | 72% |
| データ融合 | 71% |
| 強化学習 | 71% |
| 画像処理 | 71% |
| 予測技法 | 71% |
